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スーパーカー列伝43 ポルシェ904GTS

   

こんにちは

たまにちょっと古い話を。

ポルシェ904GTSは1964年
ポルシェのレーシングモデルとして登場しました。
1964年は丁度911が登場した年で、
当初はこのフラット6エンジンを搭載する
と言うことも検討されたようですが
レースで実績のある
356カレラ2000GS-G(いわゆるカレラ2)の
フラット4のツインカム、2リッターエンジンが
ミッドに搭載されました。

最高出力は180馬力
ボディーは鋼板で組まれたスペースフレームに
FRPのボディーで、たったの650キロしかありません。

この車が遅いわけがなく、
レーシングバージョンで260キロ
ロードバージョンで250キロ出たといいます。

レーシングモデルとはいえ、生産台数は
ホモロゲを取るため100台超が生産されました。

さて、この904を語る上で欠かせないのだ
第二回日本グランプリ。

前年のグランプリで惨敗したプリンス自動車は
必勝を誓い、脅威のモンスター
スカイラインGTを投入します。

もともと1500CCの小型車だったスカイラインに
御大 桜井眞一郎の指揮のもと、
エンジンコンパートメントをえいやと20センチ
延長。

上級車のグロリアの直6エンジンを放り込み、
ウェーバーの3連キャブでチューン。

125馬力を発生する脅威の(当時としては)
モンスターを生み出します。

グランプリ前の鈴鹿でのテスト走行で
国産車最速のタイムをたたき出し。

優勝はスカイラインで間違いなかろう。
と言われておりました。

しかし。

レース直前
突如ポルシェ904がプレイベーターにより
参戦することになりました。

そのドライバーは伝説の名ドライバー
式場 壮吉。

じつは前年同氏はトヨタのドライバーも
やっておりまして。

トヨタが送り込んだ刺客では。

との憶測がまことしやかに語られました。
(私もそうおもってました)

しかし、最近ご本人がかたったところ
「値段は911Sの2台分の価格で安かった(570万ぐらいだったようです!)、
ジャズマンとして稼いだ金と、父に病院を継ぐことを条件に半分出してもらい
自分で購入した」

というのが真実のようです。
それにしても、式場氏、ドライビングの才能に加え
音楽的才能に恵まれ、しかも親が金持ちという
非の打ち所のないような、お人なんですね。
そのままやめなければ日本初の
F1ドライバーになったのではとも言われている方です。

さて、レースですが、
もうやる前から結果がわかっているようなもんだったのですが、

なんと予選で、904がコースアウトして大破。

904はシートが固定式で、
ペダルとステアリングが前後するつくりで
(レーシングカーではよくあるやつです)
コントロール系のワイヤが切れるという
トラブルが発生しやすかったようです。
このときもブレーキの不具合と言われております。

ポルシェの楽勝に暗雲がたちこめてくるところですが
なんとかガムテープ(!)で補修。
スターティンググリッドに並べます。

事故のせいで本調子ではないとはいえ
180馬力650キロ、125馬力1トン
(レースですから多少軽量化してあったでしょうが)

では勝負になりませんね。

ここで式場氏は、スカイラインのドライバー
生沢 徹氏が「一周でいいから前を走らせてくれ」
と言っていたのを思い出したそうです。

もちろんレースなので本気でそんなことを
考えてなかったのですが、
「後ろ見てたら、必死で走っているのをみて
少し前を走らせてやろう」
と思ったらしいです。生沢氏と式場氏は同郷
で、走り仲間だったそうですから、そういう
感情もあったでしょう。

スカイラインは1周だけポルシェの前に出ます。
そのときの大歓声は、今でも伝説ですから

たぶんこのことも、「某メーカー陰謀説」を
否定するものでしょうね。
Nさんは「スカイライン伝説」として
ウェブサイトに載せてますよ。

これほど宣伝になったことはなかったでしょう。

そんな牧歌的な日本のレースを彩った
名レーシングカーでした。
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 -スーパーカー列伝

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