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スーパーカー列伝88 マセラティービトゥルボ

   

こんにちは

 

イタリアのスーパーカーメーカーにとって

1974年のオイルショックは

苛烈なものでありました。

 

ガソリンなんていくらでもある

という世界から、ガソリンは貴重なもの

省資源の世になってしまったのですから、

燃料をいくら使ってもいいから、高性能を

発揮するという、スーパーカーは

真っ先に抹殺されるわけですね。

 

さて、マセラティー。

イタリアの名門も、この影響を免れることは

できませんでした。

当時の親会社であった

シトロエンもプジョーによって救済合併されるというなか、

この名門をどさくさにまぎれて手中に収める男が

登場します。

 

アレッサンドロ・デトマソです。

 

デトマソはもともとイタリア生まれではなく

アルゼンチン出身です。

アルゼンチンの名門の生まれでしたが

父親が政治犯としてとらわれ、その後

イタリアに亡命。

 

彼は、親父さんの血なのか

きわめて野心的な男でした

 

イタリアでレーサーとして活躍するなか

大金持ちのアメリカ人の妻のハートを射止め

その実家の権威を利用して

大フォードとの合弁事業を実現

あのデトマソ・パンテーラを生み出したのは

本シリーズでも、ご紹介いたしました。

 

このドサクサに名門を手中にした、

デトマソは、マセラティーに

もっと数を見込める車の開発を命じます。

これまでのような大排気量のスーパーカーではなく

比較的小型で、そしてマセラティーのブランド

にふさわしいモデルです。

 

イタリアにも日本同様2リッター以上の車には

高い税金が課せられていました。

 

そこで、新モデルは2リッターとします

これはすでに発売されていたマセラティーメラクの

2リッター用エンジンをベースにしました。

 

ただ、これだけではマセラティーらしいパフォーマンス

に欠ける。

 

そこで、市販車発のメカニズムを導入するのです。

 

ツインターボですね。

 

ターボチャージャーはご承知のとおり、

排気ガスの排出エネルギーを使って

空気を圧縮するコンプレッサーなのですが、

当然排気ガスの排出エネルギーが小さい

低速時は、ターボが回らず、只の低圧縮

エンジンとなってしまいます。

 

このターボラグを解消するために

小さいターボを2機準備することで、

レスポンスを良くしようというのが

ツインターボの目的です。

 

ビトゥルボはこのメカニズムを

車名にすることで、メカニズムを強烈に

アピールするのでした。

ターボは日本が誇るIHI製を採用していました。

 

最高出力は2リッターから180馬力。

今でこそ2リッター300馬力など当たり前

になってしまいましたが、当時としては

リッターあたり90馬力ってのは

レーシングエンジン並みという

感覚ではなかったかと思います。

 

事実、ビトゥルボは、このパフォーマンスによって

強烈な走りをするモデルに仕上がっていました。

 

さて一方で、インテリア。

これが、いかにもという感じの革と木の世界。

イギリス風のお上品ではなく

イタリア流のきらびやかなもの、

華やかなウッドパネル

高級なソファーを思わせるようなシート。

暴力的な走りとは裏腹な

なんとも艶やかなインテリアでした。

 

さて、このビトゥルボですが、

これまでのマセラティーの車に比べて

はるかにお安い値段で市場に

投入されました。

 

マセラティーのブランド

暴力的な走り

きらびやかなインテリア

手の届きそうな価格。

 

という条件がそろったビトゥルボは

倒産寸前のマセラティーを救う救世主となりました。

 

その後スパイダー、そして4ドアモデルの430

スパイダーに屋根をつけたカリフ等

さまざまなバリエーションが生まれました。

はっきり言って、マセラティーはビトゥルボしかないんじゃない?

というような感じではなかったかと思います。

 

ある程度、数を売ることには成功した新生マセラティーでしたが

一方でビトゥルボの信頼性は、目を覆いたくなるような

ものであったといいます。

 

とくに初期モデルは、電子制御ではなくキャブのターボでしたので

とにかくぶっ壊れることで有名でした。

 

信頼性の回復は

1993年にマセラティーがデトマソ傘下からフィアット傘下

になるのを待たなければなりませんでした。

 

さて、私、この車かなり好きでした。

特に豪華な内装がすばらしく

某中古車店にあった4ドアモデル

(たぶん430かな)を見に行ったことがあります。

ガンメタみたいな色で、

内装もブラックレザーという渋めのカラーリングでした。

天井もダークグレーのアルカンタラ(人造スエード)

じゃなかったかな。

マニュアルのシフトノブもウッドで、きらびやかだったのを

覚えています。

左ハンドルで、お値段は200万ぐらいだったでしょうか。

例によってバッテリー上がっておりまして

エンジンは掛かりません。

 

初期費用だけは出せなくはなかったような気もしますが

それですむわけないでしょうね

あれ買ってたら、どうなっていたか

怖いような、面白いような。

そんな思い出があります。

 

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 -スーパーカー列伝

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