スーパーカー列伝99 いすゞべレットMX1600
2016/08/15
1969年
前年あのいすゞ117を発売し、
ジウジアーロの理想のスタイリングを
手作りという形でコツコツ具現化していた
いすゞから、また新しいショーモデルが
発表されました。
いすゞべレットMX1600
1967年にべレットにGTを追加して
べレットにはスポーティーなセダンというイメージが
定着していましたが、このMX1600はベレットとは似ても
に似付かない車でありました。
ベースとなったのはいすゞが初めて製作した
レーシングカーべレットR6
エンジンは117に搭載された、1600DOHCエンジンを強化して
ミドシップに搭載。
シャーシは鋼板製のモノコック、カウルは当初アルミでしたが
後半はFRPに改められました。
この車をベースとして、
117開発で関係を深めた、カロッェリアギアが
手がけ、日本車とは思えぬようなウエッジシェープの流麗なFRP製ボディーを
架装しました。
1969年の東京モーターショーに出品したところ
大変な反響を得たMX1600。
いすゞも当初はショーモデルとして、モーターショーの
賑やかしぐらいに考えていたのか、
このMX1600は実際に走らせるには
大きな問題を抱えていました。
全く冷却のことを考えていなかったのです。
確かに当時の写真を見ると冷却のための空気
取り入れ口のようなものが見当たりません。
次第に量産という方向に変わってきたMX1600
翌年の1970年の東京モーターショーには
改良されたMX1600Ⅱが発表されます。
流麗なフロントのリトラクタブルライトは廃され
ヘッドライトは117クーペのような丸目4灯に変更され、
フロントグリルが装備されます。
またボンネットにもエア抜きのグリルが設けられました。
ミラーも当時の法規に沿ったフェンダーミラーに
MX1600よりも現実的なデザインに改められました。
どう見ても数が見込めるモデルとは考えにくいものでしたが
いすゞは117クーペで少量生産のノウハウの
蓄積も十分だったと思います。
いよいよ量産化に向けて秒読みかと
思われていた1600MXⅡでしたが結局のところ
量産されることはなく、ショーモデルとして、数台が
製作されただけで終わりました。
量産化がキャンセルされた理由としては、
営業サイドの反対が大きかったと言われています。
当時117クーペは手作りに近い生産体制をとり
日産僅か50台。
いすゞには高性能エンジンの手持ちは1600のG160 DOHCしか
手持ちがなく、117も1600で出さざるを得なかったのですが
この手作りに近い生産体制が災いしてか、
なんと172万円のプライスタグを掲げておりました。
クラウンが90万円台、あの名車ハコスカのGT-Rですら
高いといわれても150万円だった時代です。
これに加えてもっと日産台数は少なく、
価格も高い車をラインナップに加えたところで
営業的にはさっぱり貢献しないだろう
という判断だったのかと推察いたします。
MX1600を諦めた、いすゞはその後117の生産性を向上させ
手作りに近い生産体制を改め、
エンジンを1800に拡大して、価格も下げ
他の量産メーカーに伍して拡販を図ろうとします。
しかし、いすゞがいかに頑張ろうとも
トヨタ、日産、ホンダ、三菱などとの
経営体力の差は明らかでした。
いすゞは一部に熱狂的なファンを抱えながら、
経営体力の差から、モデルチェンジ時期が
長くなり、やや陳腐化した車を長く生産する
というメーカーになっていきました。
そしてバブル崩壊後の1993年には
乗用車の生産、開発をストップするのです。
当時MX1600の量産を断念した経営の判断が
正しかったのか正しくなかったのは私もよく
わかりませんが、小メーカーが生き残るために
いすゞ117で培った「少量生産のノウハウを
生かしていたら、いすゞももっと長く残り
日本唯一のプレミアムブランドになっていたかも
知れないと思うのです。
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