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名車列伝3 インフィニティ―Q45

   

自動車ってのは、基本ヨーロッパで生れたもんですから

自動車文化ってのはヨーロッパ―風なんですね。

もちろん自動車大国アメリカってのもありますので

アメリカの自動車文化ってのもありますけどね。

ですので、高級車ってのも基本ヨーロッパ文化なんですね。

例えば、

みなさん大好きなレザーとウッドの世界。

これは、ヨーロッパの馬車の世界から来ている。

馬車は基本木製ですからね。

調度も当然ウッドになるわけで、

レザーのシートってのは本当は御者用で、

お客様は布シートってのが当時の定番

本当は布のほうが高級だったらしいですけど

レザーのソファーってのもありますからね

そのへんからレザーとウッド=高級。

高級車の文化も、ヨーロッパ風なんですね。

さて

翻ってわが国では

和風な高級車ってもありましたね。

例えば前回のクラウン、そして、センチュリー

セドリック、グロリア、そしてプレジデント

まあ、この辺は和風って言ってもですね、

どっちかといえば、アメリカ風ですね。

アメリカのフルサイズ高級車を

日本版に縮小して、和テイストをちょっと

加えた、箱庭アメ車といってもいいようなものでは

なかったかと思います。

こうした状況のなか 80年代後半、ジャパンアズナンバーワンというような

調子こいた世間の空気の中、

自動車評論家の先生方はご自身は海外高級車を所有しておきながら、

日本らしい高級車という話をされるわけでして

かつては(今でも一部あるようですが)

西陣織のシートなんてトライアルもあったのですが、

例えば日本的な表現として七宝焼とか

漆塗りなんていう、いわゆる工芸品ですね、

こういうもんで和を演出してはどうかと、

とりわけ、今は亡き徳大寺有恒先生はこうした主張を

よく自書のなかで主張されていたような気がいたします。

さて、時はバブル絶頂(からちょっと下りはじめ)の1989

期せずしてなのか、思惑通りなのか、シーマ現象と呼ばれた

シーマのバカ売れに気をよくしたのか、

「きっと新しいビックカーの時代が来る」のスローガンを掲げた日産は、

ライバルトヨタが、レクサスブランドの立ち上げに際して、

新たなビックセダンを開発しているのを5年ほど前に察知。

レクサスLSは(セルシオですね)は8年をかけて、高級車の本質を追及、

驚くべき静粛性、乗り心地の良さ、燃費の向上、そしてライバルに比して

比較的お安い価格を掲げ、

欧米の高級車を震え上がらせたのでしたが、こいつに

真っ向勝負を挑んだのがこのインフィニティ―Q45でした。

そのコンセプトは日本文化を感じさせる高級と、シーマで受けた

日産らしい走行性能の追及。

走行性能は、日産が誇るマルチリンクサスとアクティブサスで

乗り心地と操縦性の両立を図ります。この辺は走りの高級車として名をはせた

シーマを踏襲。

そしてエクステリア。

和テイストを感じさせる七宝焼きのエンブレム。

インフィニティ―のエンブレムは和を感じさせる

唐草模様と、富士山と、永遠に続く道をイメージしたもの。

そしてインテリアでは、

漆塗りのインスツルメンツパネル。

KOKONインストと名付けられた、蒔絵のインスツルメンツパネルは、

工業製品への漆塗り技術で、世界に名をはせていた

福島県の坂本乙造商店の手によるもの。

釈迦に説法だとは思いますが、

自動車の車内は信じられないほど過酷な環境です。

夏場、車の中にペットや子供を放置すれば

死んじゃうぐらいの環境です。

そんなところに漆のような工芸品を置いといて

ある程度の耐久性を持たせる。

信じられないような努力が必要でしょう。

坂本乙造商店は、世界のブランドに対して

漆塗りの製品を提案しており、

漆塗りの手作りの製造方法による、一点ごとの

ばらつきを工業製品並みの品質管理をする方法を確立

していました。

なんと漆をスプレーで塗る方法を確立していたのです。

加えて高温になる自動車室内の環境を考え

漆塗りの上にチタンコーティングを施すことに成功。

その上から金蒔絵を施すという手法でした。

チタンによって漆を補強するという効果があったようです。

このインパネ。

エッグシェルと言われる白いレザーシートとセットでオプションとなり、

なんとこのインパネだけで50万円近い価格だったとのことです。

インフィニティ―Q45のジャパンオリジナルと称した

これらの和テイストな高級は、多くの顧客の心をつかむ

ことはできず、バブルのあだ花のように扱われてますが

車そのものは、グリルレスのデザインを改め、グリルを設けたり

ロングホイールベースの真面目なスタイリングを与えた

プレジデントが兄弟車として登場したりと

結構長生きしたモデルとなりましたが、

到底日産が期待したような売上ものにはならなかった

でしょうね。

いかんせん、開発期間も短く、

コンセプトも煮詰めきれなかったのが敗因だったの

かもしれません。

しかしながら、その後、メルセデスベンツのマイバッハ等

では、障子をモチーフとしたような、ルーフシェードが

採用されたり(デザイナーが日本人らしですが)

と「お・も・て・な・し」の和の雰囲気というのも認められつつ

あるわけですので、今後こういうコンセプトも

ありではないかと思ったりもします。

さて、余談ですが、

私このKOKONインストを手掛けた

坂本乙造商店さんを訪問したことがありますが、

その会社のガレージには、

程度極上のインフィニティ―Q45が鎮座していたことを

申し添えて、本稿終了とさせていただきます。

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 -名車列伝

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